税制 / 経済情報

税制

1. 不動産購入時にかかる税制

購入条件マレーシアで外国人が購入できる不動産は、MYR500,000/ 件以上のものに限定
(サラワク州では MYR350,000/ 件以上)
印紙税
(不動産登記)
不動産購入価格と市場価格を比較し、高いほうについて以下の印紙税を課税
●MYR100,000 以下の場合、1%
●MYR100,001 以上 RM500,000 以下の場合、2%
●MYR500,001 以上の場合、3%  
売買契約書作成に
かかる弁護士費用
不動産購入価格の0.4 %~1.0%

2. ローン申請時にかかる税制

ローンを引くための弁護士費用不動産購入価格の0.4%~1.0%
ローン総額の0.5%
印紙税

3. 購入時にかかるオペレーションコスト

固定資産税(Quit Rent:固定資産税)とAssessment )MYR500~1,500/年
(外国人が購入する一般的な不動産の場合)
管理費RM2.2~5.3/平米/月程度
(100平米の不動産の場合、RM220~530/月程度)
修繕費管理費の10%程度を積み立てるのが一般的
火災保険費不動産価格の0.1%程度
所得税(賃貸収入がある場合)
原則183日/年以上マレーシアに滞在する居住者は賃貸収入に対して0~28%累進課税、182日/年以下の非居住者は、28%の課税原則183日/年以上マレーシアに滞在する居住者は賃貸収入に対して0~28%累進課税、182日/年以下の非居住者は28%の課税
コンサルティング費用不動産購入にあたって利用したサービス(物件視察、価格交渉、ドキュメンテーションなど)に対する費用

4. 売却時にかかる税制

キャピタルゲイン課税
(不動産譲渡税)
2010年1月1日より5%課税
※1.保有期間5年超は免税。
※2.ただし日本の居住者の場合、国内にある不動産を売却した場合と同様に、国内で課税されることとなります二重課税を調整する外国税額控除を受けるためには、不動産を売却した年分の確定申告の際に一定の書類を添付する必要があります。
(2010年4月1日より適用)
コンサルティング費用不動産売却にあたって利用したサービス(買い手募集、価格交渉)に対する費用(1~3%)
相続税非課税(マレーシア国内)
※ 上記は、2010年1月現在の税制

5. 法人税

i.企業の居住者資格

ii.課税対象所得

iii.課税所得の計算

iv.法人税


i.企業の居住者資格

マレーシア企業の居住資格は、1967年マレーシア所得税法(「ITA」)第8条(1)項に定められているように管理および統制から判断する。企業は、事業の管理および統制がマレーシアで行なわれていれば、居住者とみなされる。最低1回の取締役会議が実際にマレーシアで開催され、かつ当該会議の開催を記録した会議議事録があれば、通常、マレーシア内国歳入庁(「IRB」)は、当該企業をマレーシアの税務上の居住者であるとみなす。


ii.課税対象所得

マレーシアの税制は属地的な性質を持っている。所得がマレーシア国内を源泉とする、あるいは、マレーシア国外から送金され国内で受領したものである場合、当該所得は原則としてマレーシアで課税される。ただし、現在では個人、会社(銀行業、保険業、空海運業は除く)等がマレーシア国内で受領した外国源泉所得は、免税の対象となっている。

不動産に関するものを除いてキャピタルゲイン税はない(下記参照)が、所得の性質を有する、あるいは取引の性質上投機とみなされる利得は、所得税の課税対象となる場合がある。また、資本控除(キャピタルアローワンス)を享受し、減価償却後価値を上回る価格で売却された資産の販売から生じた利得も、所得として課税対象となる。


次の所得源が課税の対象となる:

(a) 商取引、専門職業、事業から生じた利得および利益

(b) 雇用から生じた利得または利益(給与、報酬など)

(c) 配当、利子、割引料

(d) 賃貸料、ロイヤルティ、保険料

(e) 恩給、年金、またはそれ以外の定期収入

(f) その他の所得の性質を有する利得または利益


なお、所得税法、投資促進法にて数多くの免税所得が規定されている。また、2009年賦課年度より、企業の配当金支払について一段階方式(シングルティア方式)が導入され、これによれば、配当金は受け取った株主側で免税となる。従来のインピュテーション方式は、2013年12月31日までの移行期間を経て廃止される。


iii.課税所得の計算

以前、マレーシア国内の所得税は、IRBが常に公式課税額査定方式(「OSA」)により査定してきた。OSAでは、IRBが納税者の税額計算の責任を負っていたが、1999年度予算案により、自己申告納税制度(「SAS」)に向けた変更が開始された。課税対象者の全カテゴリー、すなわち、企業、事業、合名・合資会社、協同組合、有給従業員は、現在SASに準じている。納税者は、各自の所得税申告書を完全かつ正確に記入し、各自の納税義務を査定しなければならない。IRBは、随時監査を行ない、納税者による順守を確認する。


企業には当年度の法人税額の見積り提出が義務付けられており、この見積り額は、前年度の見積り額または修正見積り額の85%を下回ってはならない。企業は見積り額を12等分し、当年度中に分割納付しなければならない。会計年度の第6月と第9月に各々の見積り額を修正することが認められている。2008年賦課年度より、中小企業(SME)は、事業開始年度から2年間の税額見積り、分割納付を行わなくても良いことになった。なお、ここで言うSMEは普通株式による払込資本金250万リンギ以下の企業だが、2009年賦課年度よりSMEの定義が変更され、単に自社の払込資本金が250万リンギであるのみではなく、直接間接に50%超の支配関係にある親子、兄弟会社も、普通株式による払込資本金が250万リンギ以下でなくてはならないこととなった。


SASの結果として、一部の企業は過大な分割納付により所得税を過払いしている可能性がある。分割納付額が確定法人税額を上回ったことによる過払い金は、当該企業の翌年度の分割納付分と相殺、或いは還付が行なわれる。2005年賦課年度から、迅速な所得税還付に備えて税還付基金(「基金」)が設立された。なお、分割納付額が確定法人税額を下回ったことによる不足額は、期限までに納付しなければならない。分割納付額が確定法人税額を30%超下回った場合、30%を超える部分の10%が罰金として課せられる。


iv.法人税率

2009年賦課年度以降の法人税率は25%である。ただし、普通株式による払込資本金250万リンギ以下のSMEは、課税所得のうち、初めの500, 000リンギに対しては税率20%で所得税が課せられる。残りの課税対象所得は、通常の法人税率で課税される。なお、2009年賦課年度よりSMEの定義が変更され、単に自社の払込資本金が250万リンギであるのみではなく、直接間接に50%超の支配関係にある親子、兄弟会社も、普通株式による払込資本金が250万以下でなくてはならないこととなった。


6. 二国間租税条約

マレーシアは、2010年10月現在72カ国と二重課税を回避するための条約を締結している。しかしながら、アルゼンチン、アメリカとの条約は、適用範囲が限られており、海運または航空輸送業の利益のみに対応したものである。

日本・マレーシア二重課税防止条約(「JMDTA」)の主な条件は、次のとおりである:

(a) 利子

所得税法上の源泉徴収税率は15%だが、JMDTAに基づき10%に引き下げられる。

(b) ロイヤルティ

ロイヤルティとは、

●文学上、芸術上もしくは学術上の著作物(ソフトウェア、映画フィルム、ラジオまたはテレビ放送用のフィルムやテープを含む)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式もしくは秘密工程の使用もしくは使用の権利の対価

●産業上、商業上もしくは学術上の設備の使用もしくは使用の権利の対価

●産業上、商業上もしくは学術上の経験に関する情報の対価として受領する全ての種類の支払金

●船舶または航空機の裸用船契約に基づいて受領する全ての種類の支払金

と定義されている。

JMDTAに基づくロイヤルティに対する源泉徴収税率は10%である。

(c) 配当

マレーシアの居住会社から支払われる配当には源泉徴収税は課されない。


7. その他税制

i.消費税(販売・サービス税)の見直しと物品・サービス税の導入

マレーシア政府は、2005年度予算案で、現行の販売税およびサービス税は、2007年1月より物品・サービス税(「GST」)という名称の包括的な消費税に置換えられると発表した。GSTの導入は、普通の消費者から大企業、さらにマレーシアで事業を営んでいる多国籍企業まで、あらゆる人々に広範囲にわたって影響を及ぼす。

しかし、2006年2月に、マレーシア財務省(「MOF」)は、マレーシア政府がGSTの実施を延期することを決定したと発表した。GST実施スケジュールに関する国民的論議を鎮静化するため、ノール・モハメッド・ヤコップ第二財務相(当時)は、後日、GSTは無期限に延期されるものではないが、最大で4年間、導入が延期される可能性があるとの発表を行った。

税務調査委員会は、産業界から、GSTひな型案を改良し、マレーシアの企業がGST実施に向けて準備を整えるにはさらに時間を要するとのフィードバックがあったと述べている。各企業、とりわけSME間では、GST実施に備えるための明確な方向性もスケジュールもないというのが、全体的な認識である。

2009年11月にアーマド・フスニ・ハナズラ第二財務相が、関連法案の国会提出方針を明らかにし、12月には実際に提出され、税率4%、一旦は2011年半ばからの導入を目指すとしていたものの、2010年10月に再び導入延期が発表された。2011年3月現在、導入時期は未定のままである。


ii.個人所得税

居住者である個人については、累進課税制度が適用され、最高税率は26%である。非居住者である個人は、26%の一律税率に基づき税金を納めるが、特殊な分野の所得には別の税率が適用される。

非居住者にマレーシア源泉の所得がある場合でも、かかる従業員の就労が暦年で60日以下であれば、税金が免除される。


iii.源泉徴収税

マレーシアでは、非居住者に対する利子、ロイヤルティ、技術料、プラントや機械設置にかかる据付け手数料、動産の賃貸料、請負工事代金のサービス部分などの特定の支払金に対して、源泉徴収税が課税される。源泉徴収税率は、利子が15%(JMDTAでは10%)、ロイヤルティが10%(所得税法第109条)、技術料、据付手数料等が10%(所得税法第109B条)、工事請負代金のサービス部分が13%(所得税法107A条)である。なお、2009年1月1日より、販売コミッション、保証料等の非居住者への支払いについても源泉徴収税の対象となった。


iv.販売税

販売税は、国内で製造された、または、輸入された課税対象品に課せられる、一段式の税金である。販売税は、使用、処分、または輸入された課税対象品の価格に対応した従価税である。課税対象となる製品を製造する製造業者は、販売税を徴収するライセンスを取得しなければならないが、年間売上高が10万リンギ未満の製造業者は、ライセンス供与の免除証明書を申請することができる。

販売税は通常10%であるが、特定の食品や建材、酒、たばこは5%の税率で課税される。なお、将来的にGSTに置き換えられる予定である。


v.物品税

物品税は、以前は、マレーシア国内で製造された特定範囲の製品に課せられていた。しかし、物品税の適用範囲が拡大され、2004年1月1日から、輸入車両も対象に含まれるようになった(輸入車に課せられる物品税率については「貿易管理制度〜輸入品目規制」を参照)。ビール、スタウト・ビール、その他の酒、たばこの葉が含まれた巻たばこ、自動車、トランプなどの品目には、物品税が課せられる。物品税の税率は、課税対象の各製品によって異なり、物品税の課税対象品の製造業者は、当該品目を製造するライセンスを取得しなければならない。物品税の課税対象品の保管にも、倉庫ライセンスが必要である。一般的に、物品税は、当該品目が製造地を離れた時点で支払うが、自動車の物品税については、当該車両が道路交通局に登録された時点で支払われる。輸出される課税品に、物品税を支払う必要はない。


vi.サービス税

マレーシアにおける特定の物品やサービスの提供に対してサービス税が課せられる。サービス税の税率は、2011年1月1日より課税対象サービスの価格、料金または保険料の6%(2010年までは5%)で、レストラン、ホテル、ゴルフのプレー料、弁護士/会計士への支払い、私立病院、測量士、コンサルタント、自動車修理などを含む、課税対象者および課税対象サービスに対して課せられる。2009年よりホテル以外の場所で食事・飲み物・タバコ製品を提供し、かつパブ、ビアハウスライセンスを所持し酒類を提供するレストランやバーなどは全てサービス税の対象となり、年間売上RM300万以上がライセンス対象者という基準も適用されなくなった。

2010年1月1日からはクレジットカードやチャージカードについても以下のように適用されている。それぞれ発行時、及びその後12カ月毎に課金される。

●正規保持者のカード(本会員カード)につきRM50

●副保持者のカード(家族カード)につきRM25

2011年1月1日より有料(衛星)テレビ放送サービス料金へもサービス税が課されることとなった。

なお、将来的にGSTに置き換えられる予定である。


vii.印紙税

印紙税は、特定の証書および文書に対して課せられる。印紙税の税率は、証書/文書の種類および取引価格によって異なる。 主な印紙税率は以下のとおりである。

(i) 営業権、売掛金、買掛金などの譲渡に関わる文書

(a) 譲渡価格10万リンギまで:RM100毎(RM100未満切上げ、以下同)に印紙税RM1

(b) 譲渡価格10万リンギ超、50万リンギまで:RM100毎に印紙税RM2

(c) 譲渡価格50万リンギを超過する額:RM100毎に印紙税RM3

(ii) 一般的契約書及び覚書 一律RM10

(iii) ローン契約書

(a) 教育ローン:一律RM10

(b) 教育ローン以外:ローン金額RM1,000毎(RM1,000未満切上げ)に印紙税RM5

(iv) 株式

評価額RM100毎(RM100未満切上げ)に印紙税RM0.30

評価額とは以下の金額のうち最大のもの

・純資産

・売却価格

・株式額面金額

・純利益×株価収益率(PER)

なお、一部の証書や文書については、印紙税の免除が認められる場合がある。


vii.不動産譲渡益税(「RPGT」( Real Property Gains Tax)」)

マレーシアに所在する不動産の販売は、RPGTの対象となる。不動産は、「マレーシア所在のいかなる土地およびその土地をめぐる利権、訴権、または権利」と定義され、土地に付随する建物や建造物も含まれる。

P.U.(A) 146/2007 Exemption Order(免除命令)により、2007年4月1日よりRPGTが撤廃され、財務省は、2007年3月31日以降の資産売却について不動産譲渡益税を全ての人を対象に免除していた。しかし、2009年10月に発表された2010年度予算案にて、2010年1月1日よりRPGTを再導入することとなり、不動産保有期間5年以下の譲渡から発生した利益に対し税率5%で課税となっている。保有期間5年を超えたものはRPGTの対象外であり、免税である。


ix.CBU乗用車およびCKD車にかかわる税

CBU乗用車およびCKD車の税構造については、貿易管理制度の「輸入品目規制」の項を参照。


x.グループ・リリーフ(連結納税制度)

マレーシアで設立された全ての居住会社に対してグループ・リリーフを規定している。グループ・リリーフにより、当年度未処分損失の70%以下を同グループ内の他の居住会社の所得と相殺できる。ただし、払込資本金、会計年度、同グループ内の企業間の株式保有要件等に関する一定の条件を満たすことが必要である。


8. 経済刺激策(2009年度ミニ予算案)

2009年3月10日、ナジブ副首相兼財務相は、折からの景気後退に対応するための総額RM600億規模の経済刺激策を発表した。その中には以下のような税制関連事項も含まれている。


i.雇用した失業者への給与の二重控除

2009年3月10日から2010年12月31日の期間に、2008年7月1日以降に失業したマレーシア人失業者を雇用した企業は、当該被雇用者の給与につき1人あたりRM10,000、12ヶ月間を限度として、二重控除を享受できる。2009年賦課年度より発効する。


ii.雇用喪失補償金の免税額引上げ

失業の際に被雇用者が受取った雇用喪失補償金・手当ての免税額を、勤務年数あたりRM6,000からRM10,000に引き上げる。2008年7月1日から発効したものとみなす。


iii.当期損失の前年度利益との相殺

当期損失を直前賦課年度の利益と相殺し、前年度の法人税額の減額修正を可能とする。相殺できる当年度損失はRM100,000を限度とし、2009年賦課年度及び2010年賦課年度に限る。


iv.資産の加速度償却

機械・プラントの税務上の減価償却(キャピタルアローワンス)の期間は、原則6年であるが、2009年3月10日から2010年12月31日に購入した全ての機械・プラントについては、2年間で償却可能とする。2009年賦課年度より発効する。


v.改装費用の加速度償却

事業所の改装費用は、原則として税務上の減価償却の対象ではないが、2009年3月10日から2010年12月31日に出費した特定の事業所改装費用については、RM100,000を上限として2年間で償却可能とする。2009年賦課年度より発効する。